体調はぼちぼち、ベッドとソファーを往復しながらためていた録画の番組を見たりしていました。
それでようやくとっくに終わった「天保異聞 妖奇士」の最終回が見れたのですが、いまさらですが感想です。
ネタばれ有りですよ。
お江戸が舞台で時代は天保、事件の裏のあやかしを倒すという、幕府の影の組織蛮社改所の面々の活躍のお話。
ものの名の漢字から〈漢神〉という力を引き出す能力を持つ竜導という40歳の浮民のおっさんが主人公(見た目若し)ですが、彼は中心で群像劇というか、連作短編っぽいつくりです。
いろいろなわだかまりを持つ蛮社改所の仲間たちそれぞれの物語、町の人間たちの話があって、メインは竜導と異国の少女アトルでしょうか。
この世を呪い、異界にいってしまいたいと願う人間の狂おしい情念が大きな柱になっていて、異界にいって帰ってきた竜導とアトルは、誰とも分かち合えない絆で結ばれています。竜導はいい年した大人の男で特殊能力があってしっかりとお役目もある、対してアトルは女で子どもでなんの能力もなく故郷も滅び異国人なので追われる身と、ひたすら無力です。
竜導には、この世の無常が呑める。なぜなら、この世が無常でも、竜導はそれに関われるから。
でも、アトルにはできないのです。なにもないので。みごとなまでにないです。
このすげー不公平感がちょっと気になるところでしたね。同じ異界に引き込まれたものなのに、なぜ戦う力を竜導は得て、アトルは得なかったのか。代わりにアトルが得たものもないみたいだし。
少年向け作品では、少女は空っぽの〈巫女〉としてしかありえないのかなぁ。
物語が進むにつれて、あやかしの正体と天上の神々、まつろわぬ民の関係が明らかになっていきます。そしてアトルはまつろわぬ民たちから、徳川に封じられた神々を呼び出すために、その絶望と異界への憧れを利用されてしまう。
この〈まつろわぬ民〉〈喪われた神々〉という負け側は、少女向け作品と親和性が高くて、荻原規子氏の〈勾玉〉シリーズとか、なるしまゆり氏の「鉄壱智」とか扱っている作品はいろいろあります。
たぶん女の子がもともと、社会のメインストリームに出ることなんて期待されていない存在だからじゃないかと思う。そこが、朝廷や幕府に負けた人々とシンクロするんでしょうね。
だからアトルが利用されてしまうくだりはわかるんですが、その封じられていた神々の扱いが、乱暴すぎるんですよ。
ひたすら薙ぎ払うというはどうなの?
この作品であやかしは、無力な人々がこの世を呪い、異界を思うことで生まれるということになっているんだけど、征服された民や無力な一般人の思いの化身のようなものを、ただ殺す、というのはどうもね〜。
なんだか納得いかなくて、気分が悪い。
〈浄化〉という方向に向かった話がひとつもなくて残念でした。
あと、竜導が最後、異界に取り込まれたアトルに語りかける言葉・・・そこにいたる感情の流れが見えません!あんたそんなことほんとに思ってたの?とっさに考えただけじゃねぇと勘ぐってしまいましたよ(笑)。
異界もデザインが決まっていて、一枚の絵としてはなかなかおもしろいのですが、アニメの〈空間〉として何度も出ると厳しいものがあるようです。これと決めてしまうと、妙にのっぺりしたものに見えますね。
あれほど人々が焦がれるものなのか?というところがちょっと微妙になっていたよう。見えない届かないものを絵にするのはむずかしい。なんたってあの世ですから。
テーマもわかる、やる気も感じるんだけど、ところどころすごく乱暴な作品でした。粗雑というか。
町人の話にするか、奇士たちの物語にするか、アトルと竜導の話にするのか、どれか的を絞ったほうがよかったですね。
たぶん、回数が少なすぎたでしょう。24回だっけ?
一つ一つの話はまあまあなのになぁ・・・
アトルに恋する遊び人だけど純な絵師狂斎が可愛かったので、もっと彼に活躍してほしかったです!
わたしと同じようにどうも煮え切らないなぁと感じた方には、ほとんど同じテーマを使ったことらがおすすめです。
長いシリーズの外伝なんですが、こっちのほうが時代が先だしまとまりがいいので。おもしろいですよ。やはり少女向けレーベルから出ているからか、視点もだいぶ繊細です。
ああ、今日は長いなぁ。風邪ひくと退屈で困ります。